この授業で目指すこと
対象:高校1–3年/教科:情報(情報社会と個人情報)、公共/所要時間:50分
- アプリやAIサービスに渡るデータを、「入力したデータ」「行動のデータ」「端末・位置のデータ」「推測されたデータ」に分けて挙げられる。
- 「同意する」の前に、集める情報・利用目的・AIの学習への利用・第三者提供・保存期間・削除方法・年齢条件を確かめられる。
- 生成AIへの入力が学習に使われることがあると理解し、場面に応じて入力する情報を選べる。
準備物と端末・AIサービス
| 項目 | この授業での扱い |
|---|---|
| 生徒の端末 | 不要。自分の端末の設定画面や利用履歴を見せ合う活動はしません。 |
| AIサービス | 使いません。教材の利用規約は架空です。 |
50分の進め方
- 導入:今日、渡したデータは?
端末を見ずに、今日使ったアプリやサービスに渡ったと思うデータを3つ書く。アプリ名は書かなくてよい。
- データの4種類
入力したデータ(文章・写真)、行動のデータ(使った時間・正答率)、端末・位置のデータ、推測されたデータ(得意・苦手、関心)に分けて説明する。
- 読解:架空の利用規約を読む
班で「まなびノートAI」の利用規約を読み、確認表の7項目を埋める。気になった点に印をつける。
- 判断:3つの場面
3つの場面で「入力する/しない/条件を変えてから入力する」を選び、理由を書く。
- 共有:同意は「読んで選ぶ」こと
確認表と判断を共有し、同意は内容を理解して選ぶことであり、設定の変更や削除の依頼もできる場合があることを確認する。学校が扱う教育データとの違いにも触れる。
- 振り返り
「『同意する』を押す前に、私が必ず確かめる3項目」を書く。
同意の前に確かめる7項目
| 項目 | 確かめる問い |
|---|---|
| 1 集める情報 | 何が集められる?必要以上のものはない? |
| 2 利用目的 | 何のために使う?サービスに関係のない目的は? |
| 3 AIの学習 | 入力した内容がAIの学習に使われる?止められる? |
| 4 第三者提供 | だれに渡る?そのときに同意を求められる? |
| 5 保存期間 | いつまで保存される?やめた後は? |
| 6 削除 | 消したいとき、どうすればよい? |
| 7 年齢・保護者 | 自分の年齢で使える?保護者の同意が必要? |
確認表の解答例と教師の発問
| 項目 | 架空の利用規約から読み取れること | 気づかせたい点 |
|---|---|---|
| 1 集める情報 | ニックネーム、メール、学年、入力した文章・写真・音声、学習の記録、端末の種類、市区町村単位の位置 | 学習アプリに位置情報が必要か。写真には顔や背景から分かる情報が含まれる。 |
| 2 利用目的 | 提供・改善、おすすめ、AIモデルの改善、広告 | 学習と直接関係しない目的(広告)が含まれている。 |
| 3 AIの学習 | 初期設定でオン。設定でオフにできる | 何もしなければ学習に使われる。使い始める前に設定を確認する。 |
| 4 第三者提供 | 同意があれば広告提携先へ学習の傾向を提供 | 「氏名を含まない」情報でも、学習の傾向という推測されたデータが外に出る。 |
| 5 保存期間 | 退会後も最大3年 | やめてもすぐには消えない。 |
| 6 削除 | 問い合わせフォームから依頼 | 削除を依頼する方法があるかを確かめておく。 |
| 7 年齢・保護者 | 13歳未満は不可。18歳未満は保護者の同意が必要 | 高校生の多くは保護者の同意が条件になる。実在のサービスでも条件はサービスごとに異なる。 |
3つの場面の考え方の例
- 場面A(進路の悩みを、名前と学校名をつけてAIに相談):名前と学校名は入力しない。深刻な悩みは、AIだけでなく先生や相談窓口など人に相談する。
- 場面B(自分で書いた英作文の文法チェック):個人を特定できる内容が含まれていないことを確かめ、学習への利用設定を確認すれば、入力してよい場合が多い。
- 場面C(友だちと写った写真の背景を変える):友だちの同意なしには入力しない。写真は本人の情報であり、自分だけで決められない。
発問と想定される反応
| 発問 | 想定される反応 | 返し方の例 |
|---|---|---|
| 利用規約、いつも読んでいる? | 「長くて読まない」「みんな同意しているから大丈夫」 | 全部を読むのは難しいので、7項目だけを探す読み方を提案する。 |
| 同意したら、もう何もできない? | 「仕方がない」 | 設定の変更や削除の依頼ができる場合がある。確かめる場所を知っておくことが大切。 |
| 学校で使うシステムの情報も、毎回同意が必要? | 「同意していないのに使われているのは変」 | 公立学校などが扱う教育データは、法令に基づく事務のために利用目的を特定し、その範囲で扱うのが基本で、すべての場面で同意が必要なわけではない(文部科学省「教育データの利活用に係る留意事項」)。目的の範囲と、だれが責任を持つかを確かめることが大切だと整理する。 |
困ったときの対応
- 自分のアプリの設定を見せたがる・見せ合う流れになったとき:授業中は端末を見ないルールに戻す。設定の確認は各自が家庭で行うよう促す。
- 「規約を読まずに同意してしまった」と不安になる生徒:責めずに、今からできること(設定の確認、削除の依頼、保護者への相談)を示す。
- 具体的なサービス名を挙げて良し悪しを決めたがるとき:実在のサービスを授業内で評価しない。条件は変わるため、7項目で自分で確かめることに戻す。
- 個人的な被害(なりすまし、写真の拡散など)が話題に出たとき:その場で詳しく聞かず、授業後に個別に対応し、必要に応じて校内の担当者や外部の相談窓口につなぐ。
- 時間が足りないとき:場面Cを優先する(他人の情報の扱い)。
評価の観点
| 観点 | 見取る場面 | 十分に達成している姿 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | ワークシート2・3 | データの種類を区別し、架空の利用規約から7項目を正しく読み取っている。 |
| 思考・判断・表現 | ワークシート4 | 場面ごとに、自分と他人の情報、利用目的、学習への利用を踏まえて判断の理由を書いている。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 振り返り | 今後サービスを使うときに確かめる項目を、具体的に選んでいる。 |
共通評価ルーブリックも使えます。
個人情報・著作権・年齢条件・事実確認の注意
- 個人情報:生徒が実際に使っているアプリ名、設定、利用履歴を書かせたり見せ合わせたりしません。写真や他人の情報は、本人の了解なしに入力しないことを確認します。
- 著作権:実在のサービスの利用規約を教材として配布する場合は、全文を複製せず、必要な部分を出典つきで示します。この教材の規約は架空です。
- 年齢条件:生成AIサービスには、利用できる年齢の下限や、未成年の利用に保護者の同意を求める条件を定めているものがあります。条件はサービスごとに異なり、変更されることもあるため、授業で使う場合は、学校(教育委員会)が利用を認めたサービスの最新の利用規約を授業前に確認し、必要に応じて事前に保護者の理解を得ます。この授業は、生徒がAIサービスを使わなくても実施できます。
- 事実確認:利用規約は変更されます。実在のサービスについて話すときは、その時点の公式の利用規約・プライバシーポリシーで確かめます。
保護者・管理職への説明
アプリやAIサービスの利用規約を読み、自分のデータの行き先を確かめる力を育てる授業です。生徒の実際の利用状況は扱わないこと、未成年の利用には保護者の同意を求めるサービスがあるため、家庭でも一緒に設定を確認してほしいことを伝えてください。
根拠と参照資料
- 個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(令和5年6月2日)(2026-10-01確認)
- 文部科学省:教育データの利活用に係る留意事項について(第4版、令和8年4月)(2026-10-01確認)
- 文部科学省:生成AIの利用について(初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0、令和6年12月26日)(2026-10-01確認)
- 内閣府:人間中心のAI社会原則(平成31年3月29日 統合イノベーション戦略推進会議決定)(2026-10-01確認)
一次資料は確認日時点の内容です。改訂されることがあるため、授業前に最新版を確認してください。教材内の事例・人物・団体・数値はすべて架空です。
版と利用条件
CC BY-NC 4.0。出典表示のうえ非営利目的で改変できます。教材の版:1.0(更新日:2026-10-01)。
AI授業の準備室 / ATM-HS-DATA / 版 1.0 / 2026-10-01 / CC BY-NC 4.0