高校 / 公共・主権者教育 / 50分

選挙と生成AI:その動画、拡散する前に

架空の市長選挙を舞台に、AIで作られた偽の発言動画・集会写真・まとめ記事などのカードを読み、選挙公報・候補者本人の公式発信・選挙管理委員会で確かめます。実在の政党・政治家・選挙は扱いません。

授業時間
50分
対象
高校(公共)
形態
4人組→個人
端末・AI
使わない
スマートフォンの動画を見る高校生と、共有しようとする手をそっと止めるもう1人の高校生

この授業でできるようになること

  • 生成AIで、本人そっくりの動画や本当らしい写真・記事が作れることが分かる。
  • 選挙の情報を、選挙公報・候補者本人の公式発信・選挙管理委員会という一次情報で確かめられる。
  • 有利でも不利でも、確かめられない情報は広めない判断ができる。

準備

端末と生成AIサービスは使いません。

授業の流れ(50分)

  1. 0–5分

    導入:動画が回ってきたら?スライド2

    挙手で「広める・確かめる・スルー」を選ばせる。「スルー」を選んだ生徒にも理由を聞く。

    今日は、架空の市長選挙で、拡散する前に確かめる練習をします。実在の政党や政治家は出てきません。

  2. 5–10分

    生成AIで作れるもの・場面の説明スライド3・4

    本人そっくりの動画や写真、記事風の文章が作れることを伝え、架空の「かもめ野市長選挙」の設定を確認する。

    見た目や声で見分けるのではなく、『どこから来た情報か』で考えます。

  3. 10–25分

    活動1:カードA〜Eを調べるスライド5

    4人組でワークシート1に取り組む。カードごとに「広める・広めない・確かめてから」を丸で囲み、決め手と確かめる先を書く。1枚3分。

    どの候補を支持するかは、今日は関係ありません。情報の確かさだけを見てください。

  4. 25–33分

    一次情報で確かめるスライド6・7

    選挙公報・候補者本人の公式発信・選挙管理委員会の三つを示し、ワークシート2の一次情報シートとカードを照らし合わせる。食いちがいに線を引かせる。

  5. 33–40分

    共有:カードの答えと「有利な偽情報」スライド8・9

    班ごとに発表させ、答えを確認する。A・Bは架空のAI作成の動画・写真であることを明かす。カードBで、応援している候補に有利な情報でも確かめることを考えさせる。

    自分の考えに合う情報ほど、確かめずに広めたくなります。そこが一番あぶないところです。

  6. 40–45分

    三つの問いとルールスライド10・11

    拡散する前の三つの問いを板書する。総務省の説明で確認できる範囲のルールを紹介し、細かいルールは選挙管理委員会などで確かめると伝える。

  7. 45–50分

    振り返り:出口チケットスライド12

    ワークシート3に書き、2〜3人が発表する。

板書のまとめ

黒板に残すこと

  • 選挙公報候補者の主張
  • 候補者本人の公式発信選管に届けたサイト
  • 選挙管理委員会日程・投票の方法

拡散する前に:だれが発信?/一次情報と合う?/広めたら、だれが困る? 有利でも不利でも、確かめられないものは広めない。

カードの答えと解説

カード・候補者・一次情報シートはすべて架空です。判断の理由と確かめる先が書けていれば十分です。

カード判断決め手確かめる先
A広めない新しいアカウント、「拡散希望」、出典なし。公報②の「若者会議」と食いちがうA候補の公式発信、報道機関
B広めない非公式。写真が本物か、どこで撮ったか分からない。「1万人」の根拠がないB候補の公式発信、報道機関
C広めない(誤り)公報②③と逆。A候補はプール建て替え、B候補はバスの増便選挙公報②③
D広めない・入力しない選管①は投票所と期日前投票。選管を名乗る別のアカウント選挙管理委員会①
E確かめられる選管①のページにのっている公式アカウント。予定の発信選挙管理委員会①

カードごとの補足

  • A:作られたばかりのアカウント、「拡散希望」、いつどこでの発言かが書かれていない。公報②の「若者会議」とも食いちがう。架空の後日談として「A候補の公式サイトが、動画は本人の発言ではなくAIで作られたものだと発表した」と伝えてもよい。食いちがいだけで偽物と断定はできないので、本人の公式発信と報道で確かめる、が正解の筋道。
  • B:写真はAIで作った架空のもの(この教材の画像)。応援する側が出した、候補者に有利な情報。有利な偽情報も、有権者の判断をゆがめる。
  • C:公報②③と照らすと、A候補は建て替えを主張し、B候補は増便を主張している。まとめ記事の内容は両方とも逆。AIのまとめは、もっともらしくても元の資料と比べる。
  • D:選管①の案内は、投票所と期日前投票。選管を名乗る別のアカウントで、名前と生年月日を入力させようとしている。広めないだけでなく、入力しない。
  • E:選管①のページから見られる候補者の公式アカウント。予定の発信は一次情報として扱える。ただし、主張が正しいかどうかは、別の候補の主張や報道と比べて自分で考える。

発問と予想される反応

  • 「どうせ偽物でも、面白いから広めるだけ」:投票日直前に広まった偽情報は、訂正が届く前に投票が終わることがある、と返す。
  • 「報道も信用できない」:一つの報道で決めず、複数の報道と本人の公式発信を比べる、と整理する。
  • 「シェアしたら逮捕される?」:この授業では断定しない。総務省の説明で確かめられることだけを示し、細かいことは選挙管理委員会などで確かめると伝える。

詳しい情報

政治的中立と授業の進め方
  • 実在の政党・政治家・選挙、実際に出回った偽動画は扱わない。教材の候補者・政策・地名はすべて架空。
  • カードの政策(プール、バス)について、どちらがよいかを授業で評価しない。評価するのは情報の確かさだけ。
  • 生徒が実在の政治家や政党の話を始めたら、名前を出さずに「その情報は、どの一次情報で確かめられる?」と確かめ方に戻す。
選挙のルールについて(断定しないこと)

総務省の説明で確認できたのは次の範囲です。授業ではこれ以上の法的な判断(ある投稿のシェアが違反になるかなど)を断定しないでください。年齢による制限など細かいルールは、市区町村・都道府県の選挙管理委員会や総務省の資料で確認してください。

  • 平成25年の法改正で、ウェブサイト等(ホームページ、ブログ、SNS、動画共有サービスなど)を使った選挙運動が解禁された。電子メールを使った選挙運動用の文書図画の頒布は候補者・政党等に限られ、一般有権者は引き続き禁止されている。
  • 候補者の職業や経歴などに関する虚偽事項の公表、偽名による通信なども処罰される。
  • 立候補届出の際に、候補者・政党等は一つのウェブサイトのURLを届け出ることができ、選挙管理委員会を通じて周知される。
  • 市区町村の選挙管理委員会は、市区町村の長と議員の選挙に関する事務を管理する。
困ったときの対応
  • 「どれも信じられない」となる:一次情報(選挙公報・本人の公式発信・選挙管理委員会)は確かめる先として使えることを示す。
  • 家族の考えと授業の内容がちがうと悩む生徒:どの候補を選ぶかは本人と家族が考えること。授業で扱うのは確かめ方だけだと伝える。
  • 実在の偽動画の話が出る:内容や人物名は広げず、「どうやって確かめた?」に戻す。
評価の観点
観点十分満足おおむね満足
知識・技能選挙公報・候補者本人の公式発信・選挙管理委員会の役割を区別し、カードごとに確かめる先を選べる。一次情報を一つ以上挙げられる。
思考・判断・表現一次情報との食いちがいを根拠に、広めない理由を説明している。有利な偽情報の問題にも触れている。発信元を根拠に判断している。
主体的に学習に取り組む態度有権者として情報を広める前の行動を、具体的に書いている。確かめられない情報は広めないと書いている。
この教材の画像について

カードAの動画の画面(マイクの並んだ演台)とカードBの集会の写真は、生成AIで作った架空のものです。実在の場所・人物・集会ではありません。候補者の顔の画像は、実在の人物に似てしまうおそれがあるため作っていません。場面のイラストも生成AIで作った架空のものです。授業の外で使うときは、AIで作った架空の画像であることを必ず添えてください。

個人情報・年齢条件の注意
  • カードDのような、名前や生年月日を入力させるリンクには入力しないことを確認する。
  • この授業では生成AIサービスを使わない。偽動画を実際に作る活動は行わない。
保護者・管理職への説明

架空の市長選挙と架空の候補者だけを使い、実在の政党・政治家・選挙は扱いません。特定の政策や候補者の評価はせず、選挙に関する情報を広める前に、選挙公報・候補者本人の公式発信・選挙管理委員会といった一次情報で確かめる方法を学びます。

根拠と参照資料

高等学校学習指導要領(公共)は、政治参加と公正な世論の形成、地方自治を関連させて扱い、民主政治の推進における選挙の意義について指導するとしています。選挙のルールは、総務省の説明で確認できる範囲だけを載せています。

版と利用条件

画像:カードA・Bの画像と場面のイラストは、生成AIで作った架空のものです。選挙・候補者・地名・一次情報シートも架空です。

教材版:1.0(ATM-HS-ELECT)/公開日:2026-10-02/一次資料の確認日:2026-10-02。

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