高校 / 総合的な探究の時間・情報 / 50分

探究学習でAIを使う:研究計画の壁打ちと記録の残し方

AIは探究を代わりに進める道具ではなく、問いを広げる相手として使えます。どこで使い、どこで使わないか、そして使った跡をどう残すかを練習します。

授業時間
50分
対象
高校1–3年
端末
不要
更新日
2026-10-01

導入 10|判定・計画 25|記録 10|振り返り 5

この授業で目指すこと

対象:高校1–3年(探究の計画を立てる時期)/教科:総合的な探究の時間、情報/所要時間:50分

  • 探究のプロセス(課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現)の各段階で、AIを使う場面と使わない場面を理由とともに判断できる。
  • AIの提案を「採用/保留(確認が必要)/不採用」に分け、確認先を挙げられる。
  • 使ったサービス名・日付・入力・出力の要点・自分の判断を、AI利用記録カードに残せる。
根拠:文部科学省のガイドライン(Ver.2.0)は、課題研究等でレポートの素案に足りない観点を補うためにAIを使わせる場合に、情報の真偽を確かめること(ファクトチェック)を求め、やりとりの過程を参考資料として添付させることや、ツール名・プロンプト・出力・日付等を明記させることを例示しています。この授業は、その記録の型を身につけるためのものです。探究のプロセスの4段階は、高等学校学習指導要領解説(総合的な探究の時間編)に示されています。

準備物と端末・AIサービス

  • ワークシート(1人1枚。架空の壁打ち記録とAI利用記録カードを含む)
  • 板書またはスライドに「探究のプロセス4段階」を示す
  • ペアまたは3人組
項目この授業での扱い
生徒の端末不要。架空の壁打ち記録を紙で読みます。
AIサービス授業中は使いません。後日、各自の探究で使う場合は、学校が利用を認めたサービスと利用条件を確認してからにします。
事前に決めておくこと学校として探究でAIの利用を認めるか、認める場合の範囲と記録の提出方法(記録カードを提出物に添付する、など)。

50分の進め方

  1. 導入:使ってよい場面は?

    「探究でAIを使ってよい場面、使わない方がよい場面」を各自で一つずつ書く。

  2. 探究のプロセスとAIの使いどころ

    4段階を板書し、課題の設定とまとめ・表現は自分が主体であること、AIは問いを広げる・観点を補う相手として使えることを説明する。

  3. 判定:架空の壁打ち記録を読む

    架空の生徒Aさんの記録を読み、AIの提案5つに「採用/保留/不採用」を付け、理由と確認先を書く。個人で5分、ペアで10分。

  4. 計画:自分の探究に当てはめる

    自分の探究テーマ(未定なら例から選ぶ)で、4段階ごとに「AIに聞きたいこと」「自分でやること」「確認先」を計画表に書く。

  5. 記録:AI利用記録カードを書く

    Aさんの記録を例に、記録カードの各欄(サービス名、日付、入力、出力の要点、採用したこと・しなかったこと、確認先)を埋める。全体で書き方をそろえる。

  6. 振り返り

    「私の探究でAIを使うときのルール」を1文で書く。

探究のプロセスとAIの使いどころ

段階AIを使える例自分でやること
課題の設定自分の問いに足りない観点を挙げてもらう。問いを絞る候補を出してもらう。何に関心があるか、どの問いを選ぶかを決める。
情報の収集調べ方や調査方法の候補を出してもらう。資料そのものを探し、出典を確認する。聞き取りやアンケートの対象・方法を先生と決める。
整理・分析集めたデータの整理の仕方の例を聞く。データを見て、何が言えるか・言えないかを判断する。
まとめ・表現自分で書いた文章の分かりにくい箇所を指摘してもらう。文章を書き、推敲する。AIの出力をそのまま自分の成果物にしない。

判定の解答例と教師の発問

ワークシートの架空の壁打ち記録(提案1–5)についての一例です。理由と確認先が書けていれば、判定が異なっても認めます。

提案判定の例理由・確認先
1 問いを3つに絞る案採用(自分で選ぶ)候補として役立つ。どれを選ぶかはAさんの関心と調べられる範囲で決める。
2 「この地域の空き店舗率は23%」保留→確認できなければ不採用出典がない。市や商工団体などの公表資料で確かめる。見つからなければ使わない。
3 全店舗の店主の氏名と連絡先を集める不採用(方法を修正)目的に必要以上の個人情報。聞き取りの対象・方法は先生と相談し、目的を説明して了解を得る。結果は個人が分からない形でまとめる。
4 聞き取りの質問案採用(自分で直す)たたき台として使い、相手に失礼な質問や答えにくい質問がないか自分で見直し、先生に確認する。
5 「まとめの文章は私が書きます」不採用まとめ・表現は自分の学び。自分の文章への指摘を求める使い方に変える。

発問と想定される反応

発問想定される反応返し方の例
提案2の数値、レポートに使える?「AIが言っているから使える」「具体的だから正しそう」「この数値はどこから来た?」と問い、出典がない数値は確認できるまで使わないと確認する。
提案3の何が問題?「たくさん集めた方が正確」「その情報は問いに答えるのに必要?集めた情報を誰がどう守る?」と、目的と必要最小限を考えさせる。
記録はなぜ残す?「先生に疑われないため」自分の判断の過程が残り、後で確かめ直せる。読む人が、どこまでが自分の考えかを判断できる。

困ったときの対応

  • 学校でAIの利用を認めていない場合:判定と計画表だけを行い、「使う場合はこう記録する」という型として学ぶ。記録カードは調べ学習全般(Web検索など)の記録にも使える。
  • 探究テーマが未定の生徒:ワークシートの例テーマから選ばせる。
  • テーマに家庭の事情や健康など個人的な内容が含まれる場合:AIに個人の事情を入力しないよう確認し、必要に応じて担任や養護教諭など校内の相談先につなぐ。
  • 「全部AIに聞けば早い」という反応:課題の設定とまとめ・表現は自分が主体であることに戻り、AIに聞く前に自分の考えを1行書くルールを示す。
  • 時間が足りないとき:計画表を宿題にし、記録カードの書き方の確認を優先する。

評価の観点

観点見取る場面十分に達成している姿
知識・技能AI利用記録カードサービス名・日付・入力・出力の要点・判断・確認先がそろっている。
思考・判断・表現判定表出典のない数値や過剰な個人情報の収集に気づき、確認先や代わりの方法を書いている。
主体的に学習に取り組む態度計画表、振り返り自分の探究に当てはめ、AIに頼ることと自分でやることを区別した計画を立てている。

探究の成果物を評価するときも、AIを使ったかどうかではなく、記録と判断の過程を見ます。宿題・レポートAI利用評価表と組み合わせられます。

個人情報・著作権・年齢条件・事実確認の注意

  • 個人情報:AIには自分や他人の氏名、学校名、連絡先、写真を入力しません。聞き取りやアンケートで集める情報は目的に必要な範囲にし、先生と方法を決めます。個人情報保護委員会は、生成AIサービスに入力した個人情報が機械学習に使われることがあると注意を呼びかけています。
  • 著作権:AIの出力や他人の文章を使う場合は、出典・引用として明記し、自分の文章と区別します。外部のコンテストや校外への発表は授業の範囲を超える利用になるため、応募規約と著作権を確認します。
  • 年齢条件:生成AIサービスには、利用できる年齢の下限や、未成年の利用に保護者の同意を求める条件を定めているものがあります。条件はサービスごとに異なり、変更されることもあるため、授業で使う場合は、学校(教育委員会)が利用を認めたサービスの最新の利用規約を授業前に確認し、必要に応じて事前に保護者の理解を得ます。この授業は、生徒がAIサービスを使わなくても実施できます。
  • 事実確認:AIが示した数値・資料・事例は、一次資料で確認できるまで使いません。確認できなかったことも記録カードに書きます。

保護者・管理職への説明

探究でAIを使う場合の「記録の残し方」を学ぶ授業です。授業中に生徒はAIサービスを使わないこと、校外でAIを使う場合も学校の方針と利用規約を守り、記録カードを残すよう指導していることを伝えてください。学校として探究でのAI利用を認めるかどうかは、事前に校内で決めておきます。

根拠と参照資料

一次資料は確認日時点の内容です。改訂されることがあるため、授業前に最新版を確認してください。教材内の事例・人物・団体・数値はすべて架空です。

版と利用条件

CC BY-NC 4.0。出典表示のうえ非営利目的で改変できます。教材の版:1.0(更新日:2026-10-01)。

AI授業の準備室 / ATM-HS-INQ / 版 1.0 / 2026-10-01 / CC BY-NC 4.0