中学校 / 50分 / 情報モラル・知的財産

生成AIと著作権:作る・使う・公開するの違い

「AIが作ったものなら自由に使える」は本当? 作る・使う・公開するの3つの場面に分けて、著作権の考え方と、公開する前に確かめることを学びます。

導入・解説 15|班活動 15|共有 15|振り返り 5

授業時間
50分
人数
3–4人組
端末
不要
更新日
2026-10-01

この授業で目指すこと

  • 著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」で、アイデアや事実そのものは著作権で守られる対象ではないことを説明できる。
  • 生成AIを使う場面を「作る」「使う(授業の中)」「公開する(SNS・校外)」に分け、場面によって著作権の考え方が変わることを説明できる。
  • AIで作ったものを公開する前に、既存の作品に似ていないかを確かめ、AIを使ったことを正直に示すなど、自分がとる行動を選べる。
授業者へ:この授業は法律の判断を教える授業ではありません。著作権侵害になるかどうかは個別の事情で判断され、最終的には裁判所が判断します。教師も「これは必ず違法」「これは必ず大丈夫」と断定せず、資料の言い方(「なり得る」「可能性がある」)に沿って話してください。

対象と準備

項目内容
対象中学校1〜3年。技術・家庭(技術分野)、社会(公民的分野)、道徳、美術・国語の導入などで実施できます。
時間50分(5分単位の配分は下の「50分の進め方」)
準備物投影スライド、ワークシート(1人1枚。場面カード1〜7を含む)、班ごとに3色の付箋(作る・使う・公開する)
端末生徒は不要。教師はスライド投影用の機器があれば使います。
AIサービス使いません。実際に画像生成AIを動かして見せることもしません(既存作品に似た画像が出る可能性があるため)。

50分の進め方

  1. 導入:AIが作った絵はだれのもの?

    「AIが作った絵は自由に使ってよい?」に、はい/いいえ/分からないで挙手。人数だけ板書し、授業の最後にもう一度聞くと予告する。

  2. 解説:著作物と著作権

    著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」。単なるアイデアや事実は対象にならない。他人の作品を複製したりネットに載せたりするには、原則として作った人の許可が必要で、例外として許可がなくても使える場合(自分で楽しむための複製、授業の過程での複製など)が法律で決められていると説明する。

  3. 解説:作る・使う・公開する

    AIで作る段階と、作ったものを使う・公開する段階では考え方が変わることを示す。授業の中で使うことは認められていても、学校のホームページやSNS、校外のコンテストに出すと授業の範囲を超えること、公開したものが既存の作品に「似ている(類似性)」「もとにしている(依拠性)」と著作権侵害になり得ることを伝える。

  4. 班活動:場面カードを分ける

    場面カード1〜7を「作る・使う・公開する」のどれに当たるかで分け、それぞれ「問題なさそう/確かめが必要/問題がありそう」と理由を書く。著作権の問題か、それ以外(正直さ・応募のルール)の問題かも区別する。

  5. 共有:判断が分かれた場面

    班ごとに判断が分かれた場面を発表し、全体で検討する。場面3と7で「著作権の問題」と「正直さやルールの問題」が別にあることを確認する。

  6. 公開する前のチェック

    公開する前に確かめる4つ(固有名詞で既存作品に似せない/似た作品がないか検索する/作り方の記録を残す/AIを使ったことを書く)をまとめる。

  7. 振り返り

    最初の問いにもう一度答え、考えが変わった理由を書く。

場面カードと考え方の目安(教師用)

(すべて授業用に作った架空の場面です。作品名・人物は実在しません)

場面段階考え方の目安
1 班発表のイラスト作る・使う(授業)授業の過程での利用(著作権法第35条)の範囲であれば、既存作品に似ていても許可なく使えるとされる。ただし学校の方針とサービスの年齢条件が前提。
2 家で眺める画像作る(私的)自分で楽しむための複製は、許可なく行える例外に当たり得る。
3 SNSに投稿公開する私的使用の範囲を超える。既存作品に似ていないか確かめる必要がある。「自分で描いた」と書くのは、著作権とは別に正直さの問題。
4 キャラクターのポスター作る・公開する既存作品に似せる意図で固有名詞を入れており、類似性・依拠性があれば著作権侵害になり得る。文部科学省ガイドラインは、第35条が適用されない場合の留意点として、キャラクター名など特定の固有名詞を入れて既存の著作物に似たものを意図した生成をしないことを挙げている。
5 学校のホームページ公開する授業目的の範囲を超えるため第35条は適用されない。似た作品がないか確かめ、必要なら許可を得る。
6 小説の続きを公開作る・公開する他人の文章を大量に使っており、公開すると著作権侵害になり得る。
7 感想文コンクール公開する(応募)著作権より、応募規約や評価のルールの問題。文部科学省ガイドラインは、AIの生成物をほぼそのまま自分の成果物として応募・提出することを不適切な例に挙げている。

教師の発問と想定される反応

発問想定される反応つなぎ方
AIが作った絵は自由に使ってよい?AIが作ったから著作権はない。ネットにあるものは自由。使い方(どこで・だれに見せるか)で考え方が変わる。今日はその分け方を学ぶ。
場面1と5は同じイラストなのに、なぜ違う?見る人が違う。学校の外に出る。授業の中で使うことと、外に公開することは別に考える。
場面3で問題は一つだけ?似ていないか確かめていない。うそをついている。著作権の問題と、正直さの問題を分けて考える。
似ていないかはどう確かめる?検索する。先生に聞く。画像や文章で検索する、作り方の記録を残す、迷ったら公開しない。

困ったときの対応

こんなとき対応
「これは違法ですか」と断定を求められる個別の事情で判断が変わり、最終的には裁判所が決めることを伝え、「なり得る」「確かめが必要」と言える理由を一緒に考える。
「AIの絵には著作権がないから自由」という意見が出るAIが自律的に作ったものは著作物に当たらないと考えられているが、それと、既存の作品に似ていて他人の著作権を侵害するかどうかは別の問題だと整理する。
実際の作品名やキャラクター名で盛り上がる特定の作品の評価にしないよう、「人気アニメのキャラクター」など一般的な言い方に戻す。
時間が足りない場面カードを1・3・5・7の4枚に絞る。

評価の観点

観点おおむね満足十分満足見取る場面
知識・技能授業の中で使う場合と公開する場合で、考え方が変わることを説明できる。類似性・依拠性や、許可なく使える例外の考え方を使って説明できる。ワークシート1・2
思考・判断・表現場面カードを段階に分け、理由を書ける。著作権の問題と、正直さ・ルールの問題を区別して判断できる。ワークシート2(場面カード)
主体的に学習に取り組む態度公開する前に確かめることを1つ書ける。自分の作品づくりにあてはめた行動を具体的に書ける。振り返り

判断が教師の目安と一致したかではなく、段階を分けて理由を説明できたかを見取ります。共通評価ルーブリックも使えます。

個人情報・著作権・年齢条件・事実確認の注意

  • 個人情報:生徒の作品や名前を例として投影しません。生成AIを実際に使う場合も、氏名や写真などの個人情報は入力させません。
  • 著作権:授業で実在の作品を例示する場合は、授業の過程での利用の範囲で投影にとどめ、配布資料や学校のWebページには載せません。授業で作ったものを校外に出すときは、改めて確認が必要です。
  • 年齢条件:この授業では生徒は生成AIを使いません。生成AIサービスは、利用規約で年齢条件を定めています。たとえばOpenAIの利用規約は、13歳以上(国の定める年齢がそれより高い場合はその年齢)であることを条件とし、18歳未満は保護者などの許可を求めています。Googleアカウントは、日本では13歳未満の場合、保護者がファミリーリンクで作成・管理する仕組みです(いずれも2026-10-01確認)。文部科学省のガイドラインは、年齢制限や保護者の同意の必要性を含め、提供者が定める最新の利用規約を確認・遵守するよう求めています。規約は変わるため、授業や家庭で使う前に最新版を確認してください。
  • 事実確認:AIと著作権の考え方は議論が続いています。授業の前に、文化庁「AIと著作権について」のページで最新の資料を確認してください。

保護者・管理職への説明

「生成AIを使う授業ではなく、AIで作ったものを授業で使う・外に公開する場面の違いと、公開する前に確かめることを学ぶ授業」であることを伝えます。家庭でAIの画像や文章をSNSに投稿する場面があれば、ワークシートの「公開する前のチェック」を一緒に確かめてもらうよう依頼できます。説明資料の例は学校で生成AIを扱う前ににあります。

根拠と参照資料

法律や利用規約の説明は、各資料の記載に沿って要約したものです。個別の事案の判断や最新の条件は、必ず原文と所管の窓口で確認してください。

版と利用条件

教材版:1.0/更新日:2026-10-01/参照資料の確認日:2026-10-01。教材内の投稿・会話・場面・AIの回答例は、すべて授業用に作った架空の事例です。

CC BY-NC 4.0。出典を表示し、非営利目的で改変できます。詳細は利用条件をご覧ください。