中学校 / 50分 / 総合的な学習の時間・各教科

調べ学習でAIを使う:問いの立て方と裏取り

AIに聞けば調べ学習は終わる? 問いを小さく分け、AIの回答から確かめる所を見つけ、どこで裏を取るかを計画します。

導入・問い 15|読み取り 20|共有 10|振り返り 5

授業時間
50分
人数
個人→3–4人組
端末
不要
更新日
2026-10-01

この授業で目指すこと

  • 大きな問いを「いつ・どこ・だれ・どれくらい・なぜ」で分け、調べられる問いに言い換えられる。
  • AIの回答を文ごとに読み、事実の主張と意見を区別し、確かめる所とどこで裏を取るかを計画できる。
  • 調べ学習でAIを使う順番(まず教科書や資料、AIは足りない視点を探すため、最後は自分で確かめる)と、利用の記録の残し方を説明できる。
安全な実施:この授業は端末なしで行えます。AIの回答は、教師が用意した架空の回答例(ワークシートに印刷)を使います。みどり市・青葉町は架空の地名です。

対象と準備

項目内容
対象中学校1〜3年。総合的な学習の時間の調べ学習の導入や、社会・理科・国語などの調べる単元の前に実施できます。
時間50分(5分単位の配分は下の「50分の進め方」)
準備物ワークシート(1人1枚。架空のAI回答を含む)、赤・青の色鉛筆、教科書や地域の資料(あれば)
端末不要。発展として、教師が学校の認めたサービスを1回だけ操作して投影する方法もあります(下の注意を参照)。
AIサービス基本は使いません。使う場合は、教育委員会・学校の方針と利用規約の年齢条件を確認し、教師の端末で操作します。

50分の進め方

  1. 導入:AIに聞けば終わる?

    「調べ学習は、AIに聞けば5分で終わる?」と問い、はい/いいえで挙手。調べ学習のゴールは答えを写すことではなく、確かめた根拠をもとに自分の考えを持つことだと確認する。

  2. 問いの階段

    大きな問い「ごみ問題を解決するには?」を、「いつ・どこ・だれ・どれくらい・なぜ」で小さな問いに分ける。個人で3つ書き(5分)、班で一番調べやすい問いを選ぶ(5分)。

  3. AIを使う順番

    ①教科書や資料で基本を押さえる、②AIは足りない視点を探すために使う、③AIの回答は必ず別の資料で確かめる、④自分の言葉でまとめ、使ったことを記録する、の順番を板書する。

  4. 読み取り:架空のAI回答に線を引く

    架空のAI回答を文ごとに読み、事実の主張に赤、意見に青で線を引く。事実の主張には「確かめる所(数字・日付・原因)」と「裏取り先(市の公式資料、統計、図書館の本、新聞など)」を書く。

  5. 共有:裏取り計画

    班ごとに1文を選び、どこで何を確かめるかを発表する。「〜だからです」「いちばん効果的」のような原因や比較の言い方は、確かめにくく注意が必要なことを確認する。

  6. 振り返り:利用の記録

    AIを使ったときに残す4つ(サービス名・日付・入力した文・使った所と自分で確かめた所)を確認し、ワークシートの記録欄で書き方を練習する。

架空のAI回答と読み取りの目安(教師用)

架空の回答例:「みどり市では、2020年に家庭ごみの量が前の年の半分になりました。これは、市がレジ袋を全面的に禁止したからです。ごみを減らすには、生ごみを堆肥にするのがいちばん効果的だと言われています。となりの青葉町でも、分別の種類を増やしたところ、ごみが減りました。中学生にできることは、マイボトルを持ち歩くことです。」

文種類確かめる所と裏取り先の例
みどり市では、2020年に家庭ごみの量が前の年の半分になりました。事実の主張「2020年」「半分」の数字。市の公式資料や統計で、前後の年と比べる。
これは、市がレジ袋を全面的に禁止したからです。事実の主張(原因)レジ袋の禁止が本当にあったか、その時期はいつか、ほかの原因はないか。原因の言い切りは特に注意。
ごみを減らすには、生ごみを堆肥にするのがいちばん効果的だと言われています。意見に近い(だれが言った?)「言われています」の言い手が分からない。「いちばん」は何と何を比べたのかを確かめる。
となりの青葉町でも、分別の種類を増やしたところ、ごみが減りました。事実の主張青葉町の資料で、いつ・どれくらい減ったかを確かめる。
中学生にできることは、マイボトルを持ち歩くことです。意見(提案)事実ではなく提案。効果があるかどうかは別に調べる。

この回答例は架空の市町村についてのものなので、実際には裏取りできません。授業では「どこで、何を確かめるか」を計画できればよいとします。「確かめられないので使えない」と判断できた生徒も評価します。

教師の発問と想定される反応

発問想定される反応つなぎ方
AIに聞けば調べ学習は終わる?終わる。でも先生に分かってしまう。分かるかどうかではなく、確かめていない答えでは自分の考えにならない。
「ごみ問題を解決するには?」はすぐ調べられる?広すぎる。何から調べればよいか分からない。「どこの」「いつから」「どれくらい」を決めると調べられる問いになる。
この回答で一番あやしい文はどれ?「半分」の数字。「いちばん効果的」。数字・日付・原因・「いちばん」は、確かめる所の目印。
AIはどこで使うと役に立つ?最初に全部聞く。まとめを書いてもらう。教科書や資料の後で、足りない視点を探すときに使うと学びが深まる。

困ったときの対応

こんなとき対応
事実と意見の区別に迷う「ほかの人が資料で確かめられる文か」を基準にする。確かめられるなら事実の主張(ただし正しいとは限らない)。
裏取り先が「ネットで検索」だけになるだれが出した情報かを書くよう促す。検索結果にもAIが作った文章が混じることがあると伝える。
「AIを使うのはずるい」という意見が出る使い方によって学びになる場合とならない場合があることを確認し、AIと宿題の線引きの授業につなげる。
時間が足りない読み取りを3文目までにし、残りは調べ学習の最初の時間に回す。

評価の観点

観点おおむね満足十分満足見取る場面
知識・技能AIの回答をそのまま使わず、別の資料で確かめる必要を説明できる。AIを使う順番と、利用の記録に残すことを説明できる。ワークシート3・4
思考・判断・表現大きな問いを、調べられる問いに1つ以上言い換えられる。回答の文を事実の主張と意見に分け、確かめる所と適切な裏取り先を示せる。ワークシート1・2
主体的に学習に取り組む態度自分の調べ学習でAIを使うときの注意を書ける。自分のテーマにあてはめた裏取りの計画を書ける。振り返り

正しい答えを見つけたかではなく、問いの分け方と確かめる計画を見取ります。共通評価ルーブリックも使えます。

個人情報・著作権・年齢条件・事実確認の注意

  • 個人情報:生徒が自分でAIを使う発展活動でも、氏名・学校名・住所・写真などは入力させません。個人情報保護委員会は、生成AIサービスに入力した個人情報が機械学習に利用されるおそれがあることなどについて注意喚起しています。
  • 著作権:調べ学習のまとめでAIの回答や資料の文章を使う場合は、引用の部分をはっきり分け、出典(AIの場合はサービス名・入力した文・日付)を書きます。
  • 年齢条件:この授業は端末なしで行えます。発展として生徒がAIを使う場合は、特に注意します。生成AIサービスは、利用規約で年齢条件を定めています。たとえばOpenAIの利用規約は、13歳以上(国の定める年齢がそれより高い場合はその年齢)であることを条件とし、18歳未満は保護者などの許可を求めています。Googleアカウントは、日本では13歳未満の場合、保護者がファミリーリンクで作成・管理する仕組みです(いずれも2026-10-01確認)。文部科学省のガイドラインは、年齢制限や保護者の同意の必要性を含め、提供者が定める最新の利用規約を確認・遵守するよう求めています。規約は変わるため、授業や家庭で使う前に最新版を確認してください。
  • 事実確認:生成AIは事実に基づかない誤った情報をもっともらしく作ることがあります(ハルシネーション)。授業で実在の地域やデータを例にする場合は、教師が授業前に公式資料で確かめておきます。

保護者・管理職への説明

「調べ学習でAIを使うかどうか」ではなく、「使う場合の順番と、確かめ方・記録の残し方」を学ぶ授業であることを伝えます。家庭で調べ物にAIを使う場合も、ワークシートの「利用の記録」を残すよう呼びかけられます。説明資料の例は学校で生成AIを扱う前ににあります。

根拠と参照資料

文部科学省ガイドラインが「不適切と考えられる例」に挙げる「テーマに基づき調べる場面などで、教科書等の質の担保された教材を用いる前に安易に利用する」を避け、利活用が考えられる例の「足りない視点を見つけ議論を深める目的で活用する」と、生成AIを用いたことを明記する(サービス名・プロンプト・日付など)という考え方を、授業の順番に組み込んでいます。

法律や利用規約の説明は、各資料の記載に沿って要約したものです。個別の事案の判断や最新の条件は、必ず原文と所管の窓口で確認してください。

版と利用条件

教材版:1.0/更新日:2026-10-01/参照資料の確認日:2026-10-01。教材内の投稿・会話・場面・AIの回答例は、すべて授業用に作った架空の事例です。

CC BY-NC 4.0。出典を表示し、非営利目的で改変できます。詳細は利用条件をご覧ください。