管理職・教員向け / 危機対応

生成AIに関わる校内トラブルの初動対応フロー

なりすまし画像、性的な画像加工、誹謗中傷、不適切な利用、課題の丸写し、教職員の誤入力。生成AIに関わるトラブルを把握したときの最初の行動と相談先を、印刷用フロー図とともにまとめました。

読了
約20分
対象
管理職・教員
付属
フロー図・記録用紙
更新日
2026-10-01

このフローの位置づけ

法的助言ではありません。このフローは、生成AIに関わるトラブルを把握したときに、学校が最初の数時間〜数日で確認することを整理した一般的な手順です。法的な判断や個別の事案の対応は、学校の方針(いじめ防止基本方針、危機管理マニュアル、情報セキュリティの実施手順)、教育委員会・設置者の指示に従い、必要に応じて警察・専門の相談窓口に相談してください。
対象校長・副校長・教頭、生徒指導主事、情報担当、学級担任、養護教諭
所要時間読了 約20分/校内での事前確認(職員会議・研修)30分
準備物学校のいじめ防止基本方針と危機管理マニュアル、教育委員会の連絡先、印刷用フロー図と記録用紙

ねらい

  • 生成AIに関わるトラブルを把握したときに、被害を広げない最初の行動をとれる。
  • 類型ごとに、校内で報告する相手と、外部の相談先を判断できる。
  • 平常時に、校内の役割分担と連絡先を決めておける。

初動の5原則

  1. 安全と心のケアを最優先にする被害を受けた児童生徒の安全を確保し、責めずに話を聞きます。聞き取りは複数の教職員で、本人の負担に配慮して行います。
  2. 画像や投稿を広げない教職員も、問題の画像や動画を転送・保存・印刷・複製しないでください。特に児童生徒の性的な画像は、扱いそのものに法的な問題が生じ得ます。記録は、日時、確認した場所(アプリ名・グループ名・URL)、投稿者の表示名などの文字情報で残し、画像の扱いは警察・教育委員会の指示を受けます。
  3. 一人で抱えない把握した教職員は、その日のうちに管理職へ報告します。組織として対応し、担任だけに任せません。
  4. 決めつけない「AIで作った」「この生徒がやった」と断定せず、事実と推測を分けて記録します。AI生成物かどうかの判定ツールの結果だけで判断しません。
  5. 時刻と事実を記録する記録用紙に、把握の経路、時刻、対応した人、対応内容を書きます。児童生徒の氏名は記号で記録し、記録用紙は校内の決まりに従って保管します。

初動フロー(全類型共通)

  1. 1. 受け止めと安全確保

    相談してくれたことを受け止め、被害児童生徒の安全と居場所を確保する。拡散が続いている場合は、関係する児童生徒に「これ以上広げない」「画像は見せなくてよいので、どこで見たかを教えてほしい」と伝える。

  2. 2. 管理職へ報告・対応チームの編成

    管理職、生徒指導主事、担任、養護教諭、情報担当などで対応チームを作り、窓口と記録係を決める。

  3. 3. 事実の確認と類型の判断

    何が、どこで、いつから、どの範囲に広がっているかを確認し、下の類型A〜Eのどれに近いかを判断する。

  4. 4. 設置者・外部への相談

    教育委員会・設置者へ報告する。性的な画像加工、脅迫、金銭の要求などがある場合は、速やかに警察と連携する。

  5. 5. 本人・保護者への説明

    被害・関係した児童生徒の保護者へ、分かっている事実と学校の対応方針を説明する。推測や他の児童生徒の個人情報は伝えない。

  6. 6. 指導・心のケア・再発防止

    被害児童生徒の心のケア、関係児童生徒への指導を継続し、学年・学校全体の情報モラル教育や校内ルールの見直しにつなげる。

類型別の対応

A. 実在の人物の画像・音声を加工したなりすまし、性的な画像加工(いわゆる性的ディープフェイク)

最も緊急度の高い類型です。文部科学省は2026年3月12日の事務連絡で、生成AIサイトや画像加工アプリで実在する児童生徒の画像を性的画像に加工する事案について、児童生徒が加害者になる事案も多数生じていること、学校行事や卒業アルバムの画像も悪用される傾向があることを示し、事案が発生した場合は速やかに警察と連携して対応すること、被害を受けた児童生徒の心のケアと加害児童生徒への指導に遺漏のないようにすることを求めています。

  • 画像を保存・転送しない(初動の原則2)。
  • 管理職から教育委員会へ報告し、警察へ相談する。
  • 拡散先からの削除は、警察・教育委員会と相談の上、違法・有害情報相談センターや法務省の人権相談窓口などの助言を受けて進める。
  • 児童生徒間の行為は、学校のいじめ防止基本方針に沿っていじめとしての対応も検討する。

B. 誹謗中傷・からかい目的の生成物(性的でない偽画像・偽の発言など)

  • いじめ防止基本方針に沿って対応する。投稿場所・日時などを記録した上で、投稿の削除は関係児童生徒への指導と合わせて本人に行わせ、削除されたことを確認する。
  • 学外のSNSなどで拡散している場合は、違法・有害情報相談センターや法務省の人権相談窓口に削除の方法を相談する。

C. 学校の端末・アカウントでの不適切な利用

  • 年齢条件を満たさないサービスの利用、不適切な生成、個人情報の入力など。情報担当と、端末・アカウントの利用状況を確認する。
  • 学校の利用ルールに沿って指導し、必要に応じてフィルタリングや設定を見直す。

D. 課題・レポートの丸写し

  • 課題を出したときに、生成AIの利用について「禁止/条件付きで可/推奨」をどう示していたかを確認する。
  • 判定ツールの結果だけで不正と決めず、本人に内容を説明してもらう、口頭で確認するなど、学習の過程を確かめる。
  • 指導では「なぜ自分のためにならないか」を伝えることを重視し、評価の扱いは学校の評価の方針に沿って決める。今後の課題設計は宿題・レポートAI利用評価表を参考にできる。

E. 教職員による個人情報等の入力

  • 入力を止め、何を・いつ・どのサービスに入力したかを記録し、教育情報セキュリティポリシーの実施手順に沿って管理職・情報セキュリティの担当者へ報告する。
  • 履歴の削除などは自己判断せず、指示を受けて行う。予防は授業準備・校務の生成AIガイドを参照。

架空の事例で確かめる

※この事例は、校内研修で手順を確かめるために作成した架空の事例です。

放課後、中学2年の生徒Cさんが担任に「部活の写真が加工されて、グループに流れているらしい」と相談した。担任は画像を見せてもらうことはせず、聞き取った内容(どのアプリの、どのグループか、いつ知ったか)を記録用紙に書き、その日のうちに教頭へ報告した。学校は対応チームを作って教育委員会へ報告し、加工の内容が性的なものであることが分かった段階で警察に相談した。Cさんには養護教諭とスクールカウンセラーが継続して関わり、保護者には分かっている事実と今後の対応を説明した。

研修での問い:この対応で、初動の5原則はどこに表れていますか。あなたの学校で同じことが起きたら、最初に報告するのはだれですか。

相談先

学校としての相談は、まず設置者(教育委員会・学校法人)へ行います。外部の窓口は、事案の内容に応じて選びます。

相談先主な内容
緊急時:110番・最寄りの警察署生命・身体への危険、脅迫、画像を使った脅しなど緊急性が高い場合
警察庁「サイバー事案に関する相談窓口」都道府県警察の相談窓口、オンラインの通報・相談受付の案内
違法・有害情報相談センター(総務省支援事業)インターネット上の違法・有害情報への対応(削除依頼の方法など)の相談
法務省「インターネット人権相談受付窓口」インターネット上の名誉毀損・プライバシー侵害などの人権相談
文部科学省「子供のSOSの相談窓口」(24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310)児童生徒・保護者が夜間・休日も相談できる窓口
こども家庭庁「各種相談窓口」青少年のインターネット利用に関する相談窓口の一覧
設置者(教育委員会・学校法人)の担当課記入欄:             電話:        

各窓口のURLは2026-10-01に確認しました。電話番号や受付時間は変わることがあるため、使う前に各ページで確認してください。

平常時に決めておくこと

  • 生成AIに関わるトラブルの校内の報告先と、休日・夜間の連絡方法
  • 教育委員会・設置者の担当課と連絡先
  • 所轄の警察署、都道府県警察の相談窓口
  • 児童生徒・保護者への相談窓口の周知方法
  • 学校行事の写真や卒業アルバムの公開範囲の見直し
  • 情報モラル教育・「生命(いのち)の安全教育」の実施計画

予防の授業には、15分AIリテラシー5回セットの第4回や、文部科学省が掲載している警察庁の啓発資料「そのAIの使い方、犯罪かも・・・」を使えます。

個人情報・著作権・年齢条件・事実確認の注意

  • 個人情報:記録、報告、研修資料には児童生徒の氏名や画像を載せず、記号で記録します。事案の内容を生成AIに入力して対応文案を作ることはしません。
  • 著作権・肖像:問題の画像を校内研修などの資料に転用しません。
  • 年齢条件:類型Cでは、利用されたサービスの年齢条件と利用規約を確認し、保護者と共有します。
  • 事実確認:「AIで作られた」かどうか、だれが作ったかは、確認できた事実と推測を分けて扱います。

根拠と参照資料

利用条件と版

CC BY-NC 4.0。出典を表示し、非営利目的で改変できます。詳細は利用条件をご覧ください。教材版:1.0/更新日:2026-10-01/参照資料の確認日:2026-10-01。

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