
この授業でできるようになること
- AIは答えのついた例から見分け方を学び、初めて見るものを判定することを、体験を通して説明できる。
- 例がかたよっていると、まちがったルールを学び、判定もかたよることに気づく。
- AIの判定を見るとき、どんな例で学んだか、まちがいがないかを確かめようとする。
準備
- 切り取りカード(A4で2枚、班に1組。線で切り分けておく。例9〜12は先生が持っておき、活動2で配る)
- ワークシート(A4両面1枚、人数分)
- 投影スライド(13枚)
- 3〜4人組の机の配置。カードを並べる広さがあるとよい
端末と生成AIサービスは使いません。カードは白黒印刷でも使えます(特徴は文字でも書いてあります)。
授業の流れ(45分)
- 0–5分
導入:AIはどうやって見分ける?
「人がきまりを全部書く」「例から学ぶ」のどちらだと思うか挙手させる。正解は言わない。
今日はみんながAIになって、確かめてみます。
- 5–10分
しくみと進め方
「例を見る→ルールを作る→判定する」の3段階を示し、ポムとナナの例を1枚ずつ見せる。見分け方は先生(図鑑)だけが知っていると伝える。
AIは答えを知りません。手がかりは、例カードだけです。
- 10–18分
活動1:例カード8枚からルール作り
班に例1〜8とテストカード①〜⑩、名札を配る(テストカードは裏返しておく)。8枚ぜんぶに当てはまるルールを1つ決め、ワークシート1に書く。
ルールは1つだけ。だれが使っても同じ答えになるように書こう。
- 18–25分
テスト1と答え合わせ
テストカード①〜⑥をルールだけで判定し、ワークシート2に書く(5分)。答えを映し、〇✕と正解数を書かせる。どの班がどのカードをまちがえたかを挙手で確かめる。
③と④をまちがえた班は、どんなルールでしたか? ルールがまちがっていたのに、例8枚には全部合っていたね。
- 25–35分
活動2:例を増やしてルールを直す
例9〜12を配り、12枚ぜんぶに合うルールに直す(ワークシート3)。そのルールでテストカード⑦〜⑩を判定し(ワークシート4)、答えを映す。⑩は耳が見えないので「わからない」も正しい判断として認める。
例が増えたら、ルールはどう変わった? ⑩はルールで決められる?
- 35–41分
共有:例のかたよりと本物のAI
「かたよった例→まちがったルール→判定のまちがい」を板書で整理する。本物のAIでも、学んだ例にない場面や、例の少ない人たちについてまちがえやすくなることを伝え、気をつけることを2〜3人に聞く。
AIがまちがえたのは、AIが悪いというより、どんな例で学んだかが大きい。
- 41–45分
振り返り
ワークシート5を書く。時間があれば「わたしは__する」を2〜3人が発表する。
板書のまとめ
黒板に残すこと
- 例を見る答えつきの例から
- ルールを作る例に合う見分け方
- 判定する初めて見るものに使う
例がかたよると、ルールも判定もかたよる。決められないときは「わからない」。
カードの答えと解説
図鑑の見分け方(正解)は耳の形です。まるい耳がポム、とがった耳がナナ。もよう・大きさ・しっぽは関係ありません。
- 例1〜8:ポムはすべて「しま」、ナナはすべて「水玉」。そのため「もよう」のルールでも「耳」のルールでも8枚ぜんぶに当てはまります。多くの班は目立つ「もよう」を選びます。大きさとしっぽは両方にまざっているので、ルールになりません。
- テスト1:①ポム ②ナナ ③ポム(水玉) ④ナナ(しま) ⑤ナナ ⑥ポム。もようのルールでは③④をまちがえ4/6、耳のルールなら6/6。
- 例9〜12:水玉のポムとしまのナナ。もようのルールでは説明できなくなり、耳のルールに直すことになります。
- テスト2:⑦ポム ⑧ナナ ⑨ポム ⑩ナナ(ぼうしで耳が見えない)。⑩は「わからない」と答えられた班を特にほめます。AIに求められるのは、決められないときに決めたふりをしないことでもあります。
- 最初から「耳」を選んだ班がいたら:「8枚だけでは、もようと耳のどちらが正しいか決められなかった」ことを確かめ、偶然当たった可能性を考えさせます。
詳しい情報
困ったときの対応
- 班で意見が分かれてルールが決まらない:「いま一番多くの例を説明できるルール」を選ばせる。2つ書いてもよいが、判定はどちらか1つで行う。
- テストカードを見てからルールを変えようとする:「AIは答えを知らない」を思い出させ、テスト1の判定が終わるまではルールを変えない。
- 早く終わった班:「AIがまちがえないようにするには、例をどう選べばよい?」を考え、自分で追加したい例カードの特徴を書かせる。
- 実在の人の顔認識やちがいの話に広がった:特定の人や集団を例に出さず、「例が少ない人たちでまちがえやすくなることがある」という一般的な形でとどめる。
評価の観点
| 観点 | 十分満足 | おおむね満足 |
|---|---|---|
| 知識・理解 | 例→ルール→判定の流れで、AIが見分けるしくみを説明できる。 | AIが例から学ぶことを知っている。 |
| 思考・判断 | テスト1のまちがいの原因を、例のかたより(もようと種類が重なっていた)と結びつけて書いている。 | 例を増やすとルールが変わることに気づいている。 |
| 態度 | AIの判定を見るとき、学んだ例やまちがいの可能性を確かめる行動を、具体的に書いている。 | AIの判定もまちがえることがあると書いている。 |
共通の評価ルーブリックも使えます。
この教材の画像とカードについて
場面のイラストは、すべて生成AIで作った架空のものです。カードの生き物「ポム」「ナナ」は、この教材のために作った架空の生き物で、図はこのページで描いたものです。
教える側が知っておきたいこと
- 単純化していること:実際の機械学習では、人が読めるルールではなく、たくさんの数(重み)として見分け方を持つことが多く、例の数も何千、何万とあります。ただ「答えつきの例から学ぶ」「例に合っていても、本当の見分け方とはかぎらない」という点は同じです。
- この授業で体験すること:学習用の例の中で、本当の手がかり(耳)と関係のない特徴(もよう)がたまたま重なっていると、関係のない特徴で見分けるように学んでしまうことがあります。例を増やし、いろいろな組み合わせを入れることで直ります。
- 生成AIとのつながり:文章や画像を作る生成AIも、学んだデータのかたよりを出力に反映することがあります。中学生には、ガイドラインのいう「バイアス」ということばと結びつけてもよいでしょう。
保護者・管理職への説明
この授業は端末や生成AIサービスを使わず、紙のカードでAIのしくみ(例から学ぶこと、例のかたよりで判定がかたよること)を体験します。個人情報は扱いません。ご家庭では、AIのおすすめや判定を見たときに「どんなデータで学んだのかな」「まちがっていないかな」と話題にしていただくようお願いします。
根拠と参照資料
文部科学省ガイドラインは、児童生徒の利活用場面として「生成AI自体を学ぶ場面(仕組み、利便性・リスク、留意点)」を挙げ、小学校段階では直接の利用により慎重な見極めが必要としています。また、生成AIの学習データなどによってバイアスが含まれ得ることを理解させ、出力を慎重に判断するよう指導することを求めています。本教材は端末を使わず、しくみとかたよりを体験で学ぶ形で設計しました。
- 文部科学省:生成AIの利用にあたって(学校現場における生成AIの利用について)(2026-10-02確認)
- 文部科学省:初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0、令和6年12月26日)(2026-10-02確認。児童生徒の利活用場面は17ページ、公平性の確保とバイアスは19ページ)
版と利用条件
画像:場面のイラストは、生成AIで作った架空のものです。
教材版:1.0(ATM-ELEM-107)/更新日:2026-10-02/一次資料の確認日:2026-10-02。
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