先日「いい子に育てると犯罪者になります:岡本 茂樹 (著)」という本を読みました。
中々パンチのあるタイトルで、子育てしている親御様なら「なんだと!?」と反感を食らいそうなタイトルではありますが、ぜひ、すべての親御様に読んでほしい本だと思いましたので、紹介します。
大体、こういう本のタイトルは所謂「釣り」タイトルと言いますか、とりあえず注目させるためにセンセーショナルなタイトルにしているケースが多いですよね。
でも、この本の場合、中身も結構タイトルのまんまです。
著者の岡本 茂樹さんという方は、すでに亡くなっておられる方なのですが、立命館大学産業社会学部教授を務められた臨床教育学者の方で、各地の刑務所で、犯罪者の更生を支援されていたそうです。
直に犯罪者達と深いやり取りを続けて来られた方だからこそわかる「犯罪者になりやすい教育方針」について警鈴を鳴らされています。
特に小難しい内容でもなく、覚醒剤で捕まったのりピーこと酒井法子さんの事件や、実際の犯罪者とのやり取りの事例から、非常にわかりやすく書かれております。
もちろん、いい子=犯罪者という事を書かれているわけではないですが、「いい子であろう」と気持ちを抑圧することで、いつか爆発が来て、その結果が犯罪となる、との事です。
この犯罪とは、精神を病んでしまって、自らを傷つける行為(自傷行為や自殺)も含みます。
犯罪者たちにカウンセリングすると、凶悪な犯罪者も幼児期や小学生の頃に、親など環境のせいで過度に気持ちを抑えて「いい子でいようとしていた」時期があり、その抑圧に耐えきれなくなったために非行や犯罪に繋がっている、との主張をされています。
一般的にヤンキーや不良を見て、「親のしつけが悪い」と思われがちですが、実際には逆で、そういう子ほど過度なしつけを受けた結果、耐えられなくなって非行に走るケースが多いそうです。
例えば言うことを聞かないから暴力を振るう、などは「過度なしつけ」として、わかりやすい例ですが、一見問題なさそうな「しつけ」が子どもの気持ちを抑制させ、逆に非行や犯罪に走らせるケースもあるようです。
例えば以下のような言葉を子どもに言ってませんか?
「男だったら、しっかりしろ!」
「女はおしとやかにしろ!」
「弱音を吐くな!」
「決めたことは最後までちゃんとやれ!」
「甘えるな!」
「人様に迷惑をかけるな!」
などです。
どれも「子どもの将来を思ってこそ」の言葉なのですが、それが子どもの気持ちを抑圧しています。
非常に危険な言葉と仰られています。
これらは一貫して「子どもに我慢を強いる言葉」であることがわかります。
このような親の言いつけを、素直に守ろうとする「いい子」ほど、自らの気持ちを強く抑圧してしまいます。
「いい子であれば、あるほど」苦しむわけです。
抑圧した気持ちは、いつか必ず何か別の形で、表に出てきます。
それが「万引(窃盗)」であったり「タバコや酒」だったり「不登校」であったり「暴力」であったりするわけです。
逆に、そういった問題行動を起こした時は、「チャンス」と捉えて、頭ごなしに怒るのではなく、何か苦しい事や悩みはないかを聞いてあげる必要がある、とのことです。
この子どもからのサインを見流してしまうと、どんどん取り返しがつかないほどに悪化していくとのことです。
私も「人様に迷惑をかけるな!」というような事は、よく言ってしまいます。
ほとんどの親御様は、そういう思いがあると思います。
でも、これも「他人に迷惑をかけない」という考えは、悩みを誰かに相談したり出来ずに、一人で抱え込むことになる考えです。
その結果、他者との関係作りが下手な人間に育つ、と仰られています。
実際、刑務所に入るような犯罪者の大半は、このように人付き合いが下手で、特に「他人に頼る」ということが非常に苦手な性質があるらしいです。
人は何かしら他人に迷惑をかけないと生きていけないものであり、迷惑をかけるな、ではなく、「上手に人に迷惑をかけて生きていくんだよ」と言うべきとのことです。
他にも『反省させると犯罪者になります』という、こちらもパンチ力ばつぐんの本を出されているのですが、そちらでは
「反省させてはいけない」ということを語られています。
確かに「反省しろ」と言われて、反省するなら誰も苦労はしませんよね。
また「被害者の気持ちを考えろ」という教育も無意味である、と言われています。
「なぜ、そのような事をしてしまったのか、に目を向けないといけない」ということと、「ほとんどすべての場合において、その原因は幼児期、少年期の体験や教育にある」と言われています。
「本当の反省は、本音をすべて出してから、その後にしかできない」という言葉には、確かにと気付かされました。
また、ほとんどの人間の最初の問題行動は「嘘をつく」ですが、その時に絶対やってはいけないのは
「事実を指摘して、嘘を付くなと叱ること」とも言われています。
なぜかと言うと、ただ叱ると、子どもはごめんなさいと謝るしかなく、親も子も、「なぜ嘘をつくことになったのか?」について考えられなくなるから、という話もされています。
さらに、第5章は「子どもの前に、親が自分自身を受け入れる」です。
家庭での教育方法は子から孫へと、連鎖的に引き継がれてしまいます。
なので、まず親が「いい子に育てようとするしつけ」から解放される必要がある、とのことです。
もし、子どもが犯罪者にもならず、外から見れば順風満帆に成長しているように見えても、抑圧された気持ちは、さらに孫に引き継がれていき、どこかで爆発することになる、ということも言われています。
このように、一般的な教育方針とは、かなり異なる内容が書かれています。
すべてにおいて、この本の主張を鵜呑みにするわけではないですが、自分も子ども達の気持ちを抑圧する言動をしていたな、と、多くの点で気付かされました。
正直、親目線からすると、今までの子育てが否定される部分が多く、決して読んでいて心地よい本ではないと思います。
でも、だからこそ、すべての子を持つ親御様には、この本を読んでほしいと思います。
(『反省させると犯罪者になります』の方も、合わせて読めば、より筆者の言いたいことがわかると思います)
読み物としても面白いので、オススメです。