算数が「大っ嫌い!」というH君に、本当に嫌いなのか?を確認した話

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学研教育総合研究所の調査によると、子どもの「嫌いな教科」の第1位は常に「算数・数学」のようです。
これは小、中、高すべてにおいて共通しています。

キノコードの生徒に聞いてみても算数・数学が嫌い、という子が多くいます。
プログラミングはバリバリこなす子でも、算数・数学は嫌いなのです。
ちょっと不思議な感じがしませんか?


先日も、H君と話している時にも「算数なんか大っ嫌い!」と力強く言っていました。

このH君は、小学校低学年ながら、最近ジュニアプログラミング検定1級を取得したナイスガイで、
普段から「俺は天才だー!」などという独り言を、わりと大声で言いながらプログラミングをしています。

そんなH君が「算数大っ嫌い!」というので、ちょっと質問をしてみました。

私「算数嫌いってことは、3×5みたいな算数の問題を見たら、嫌な気分になるってこと?」

H君「うん!"げぇぇぇぇ"って感じ」

私「じゃあ、3×5=15って、答え書いてる時も"げぇぇぇぇ"って気分で書いてるんや?
15かよ…気持ちわるぅみたいな?」

H君「うーん、流石にそれはないかな」

私「じゃあ3×5という問題は"げぇぇぇぇ"だけど、15という答えは"げぇぇぇぇ"っじゃないって事?」

H君「うん、答えがわかったら嬉しい」

私「じゃあそれは”答えがわからない”から"げぇぇぇぇ"って思うだけで、算数が嫌いではないんじゃない?
むしろ答えわかったら嬉しいんだから、算数は好きなのでは?」

H君「そうかも。わかれば楽しいし」

私「じゃあ、がんばって算数わかるようにがんばれば、楽しくなるってことやね」

という感じで、最終的に「算数は嫌いではなく、わからないのが嫌」という事を、本人に気づいてもらうことに成功しまいた。

「わからないから嫌い」というは当たり前といえば当たり前なのですが、ただ「嫌い」で終わってしまうのと
「勉強さえすれば、好きになる可能性は十分ある」と認識するのとでは、大きな違いがあると思います。

このやり取りは結構いろんな子にしているのですが、低学年の時は算数嫌いって言っていた子が、数年後に数学が得意になっているようなケースが多々あります。

このように「嫌い」という問題の原因を明確にすることによって、問題解決への道筋を考えることもプログラミング的思考だと思います。


ちなみに「算数・数学」は嫌いな教科のトップだと言いましたが、実は「好きな教科」のトップでもあるのです。
(最新の2023年の調査では、小学生はトップが体育で、算数は2位になりましたが、それまで8年連続で算数でした)

つまりは、算数・数学は好きと嫌いがハッキリと二分化されているわけです。
これは、やはり「問題が解けるか解けないか?」が「好きか嫌いか?」に直接影響していると考えて良さそうです。
(実際に「得意な教科、苦手な教科」という調査でも、両方ともトップが算数・数学です)


ちょっと話を発展させてみます。
「わからない=嫌い」という方程式が成り立つのであれば「わかる=嫌いじゃない」という方程式も成り立つのかもしれません。

例えば「イジワルしてくる〇〇君が嫌い」という子も「イジワルしてくる理由」がわかると嫌いじゃなくなるのでは?
という事です。
大人なら経験ある人も多いでしょう「最初は嫌な奴だなって思ってた子が、その後、親友になる」みたいな現象です。
「嫌いな上司も、飲み会で話すると、意外と良い人だった」みたいな話です。


まぁでもよく考えると
「最初は良い人も思っていたけど、知れば知るほど嫌な所が目立って、嫌になっていく」って場合もかなりありますね。
(結婚してから仲悪くなる夫婦とか正にそれですね)
つまり「わかる=嫌い」になってしまっているわけです。
どうやら人の気持ちとは算数よりも複雑なようです。


という事で、「わからない=嫌い」「わかる=嫌いじゃない」という方程式の一般化には失敗したのですが、このように考える過程自体が、プログラミング的思考であり、子ども達に学んでほしいことだと思っています。

ぜひ、子どもと一緒に「何が嫌いなのか?」について話を深めてみてくだい。