第5期科学技術基本計画のレビューから見る日本の現状1

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これは、Society 5.0とは?の続きです。

さて、「第5期科学技術基本計画のレビュー」から日本の科学技術の現状を紐解いていく企画の続きです。

「第5期科学技術基本計画のレビュー」は8つのPDFにわけられていますので、早速1つずつ読んでいきましょう。
(サクサクいきたいので、常体での記載になりますがお許しください)

まず、5年間での予算は対GDP比1%(26兆円)を目標、実質は23.8兆円とのこと。

1年平均4.76兆円、思ったよりは多い印象。
その分、効果が表れているかは注目したいところ。

「科学技術基本計画の概要」はこのようになっている。

1996-20016年までは正直なのをしているのかわからないが、実質第5期から具体的な指標を設定し、本格的に始動した模様。
ここでもSociety5.0という言葉が出てくるが、これは前回の「Society 5.0とは?」を参照。(後々よりさらに深堀りしたい)

とりあえず、技術覇権の争いやイノベーションに取り残されないようにするための国をあげた政策との模様。
とはいえ、具体的な内容はイマイチわからない。

次に「科学技術基本計画の構造」というページを見てみる。

少し具体的な内容が出てくる。
5期の目標としては、

①40歳未満の大学本務員・教員の割合
②女性研究者の新規採用割合
③論文数
④セクター間の研究者移動数
⑤企業からの共同研究受入金額
⑥研究開発型ベンチャーの新規上場数
⑦中小企業の特許出願数割合
⑧大学の特許権実施許諾件数

この8点を目標として挙げられているようだが、肝心な最新値や目標値がないので、よくわからない。
(これはだいぶ後で出てくる)


まず「①40歳未満の大学本務員・教員の割合」から見てみる。
「大学本務員・教員」というのは、つまり「研究者」のことである。
これの高齢化現象が起きているのが問題となってきている。

下記は文部科学省の「大学教員の雇用状況 - 文部科学省」からの図である。

このように、少子化のスピード以上に若手の教員数が減っているのがわかる。

ではなぜ減っているのか?
これは博士課程まで進む人が少ないことが原因。

修士課程からの進学率は平成12:16.7%、平成30:9.3%と半減している。
先進国で博士号の取得者数が減少しているのは日本だけある。

中国に関しては人口比の割合は少ないが、そもそもの人口があまりにも違うので、日本は何も安心できない。

このように純粋な取得者数では米国と中国の2トップになっており、これが科学技術の発展スピードにハッキリと出てきているのがわかる。


じゃあなぜ、博士課程まで修了する人が少ないか?

これは簡単でメリットよりデメリットが大きいから。
「一生研究を続けたい人」だけがデメリット覚悟で進む道、茨の道になっている。

一見、博士号まで取得していれば就職に有利な感じはするが、博士課程修了者の就職率はずっと70%程度と停滞している。
(日本の一般企業では、博士号はあまり長所と見られないことも原因)
一番ベストな道は大学の教授や教員になれることだと思うが、上記であげた通り、大学のポストに空きがなく若い人がポストにつくのは相当大変である。
そのせいで、博士課程後に、いつ空くかわからないポストを待ちながら、安月給で研究者を続けている、所謂ポスドク(ポストドクター)が問題になっている。
このポスドクは任期付きの研究者なので、任期が来れば解雇されることもあり、とても不安定な状態で働いています。

現在、ポスドクの平均年収は300万、20〜30代であれば200万台も普通の世界です。
大学、大学院と長い学業期間と、それにかける学費を考えればありえないような金額です。
しかも任期は決まっており、40以上になってから任期切れで追い出されることもあるわけです。
これじゃあ、誰もなりたがらないのもわかります。

さて、これに対しての「科学技術基本計画」での取り組みと、結果は?というと、これはレビュー4に出てきます。
(ほんとにわかりにくい!)
以下の内容です。

簡単にいうと、
「任期がないポストを増やす」
「任期付きのポストでも任期後にポストを用意した上で雇う(テニュアトラック制)」
「大学や公的機関で働きながら、民間の企業でも同時で働ける環境を制度する(クロスアポイントメント制度)」
「評価制度を改め、海外での実績なども適切に評価できるようにする(現状、日本では教授に気に入られるかどうか?が一番重要です)」

ということのようです。


その結果が下の画像です。


一言でいうと、
「目標は+10%だったけど、結果は-1%」
との状況…(オイ!)

めちゃくちゃ失敗してます。
ちなみ、上記のように「〇〇割」と「◯◯%」など、単位がバラバラに書いてあるデータは大体の場合、
不都合な真実を直感的に「わかりづらくしたい」ため、バラバラにしているパターンが多いと思います。
(もし、そんな意図がなかったとしたら尚更アウトです。お役所仕事過ぎます)


と、いうことで「①40歳未満の大学本務員・教員の割合」は、完全に失敗です。
のっけからこの調子では先を調べる気がなくなってきますが、やりはじめてしまったので、残りの②-⑧の項目も調べて行きたいと思います。