第5期科学技術基本計画のレビューから見る日本の現状6

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これは、第5期科学技術基本計画のレビューから見る日本の現状5の続きです。

第5期科学技術基本計画の内容である、以下の項目を評価しており、現状①-③はこんな感じです。

①40歳未満の大学本務員・教員の割合→【成果なし】
②女性研究者の新規採用割合→【成果なし】
③論文数→【若干の成果あり】
④セクター間の研究者移動数→【成果あり】
⑤企業からの共同研究受入金額→【成果あり】
⑥研究開発型ベンチャーの新規上場数
⑦中小企業の特許出願数割合
⑧大学の特許権実施許諾件数

今回は⑥研究開発型ベンチャーの新規上場数です。

これは、ようは大学発のベンチャー企業のことですね。
本来、研究には多額の費用がかかりますので、大手企業じゃないと満足に研究をすることは難しいのですが、大学であれば研究機器が揃っておりますので、
大学の研究チームが起業することで、研究成果をビジネス化させ、イノベーションの促進につながるということですね。

では早速、最新値と目標値を見てみましょう。

2014年の基準値が29件
2020年の目標値が58件(2倍)
2018年の最新値が33件

うーん、残念な結果です。。。

ただ、これあくまで新規上場(IPO)の数なんですよね。
日本の株式市場は、新規上場が難しいと言われています。

例えばアメリカのNASDAQであれば、現在売上がまったくない、研究段階の会社でもバンバン上場されていますが、日本の場合はほぼありません。
(上場基準には売上の名目がありませんが、株主数や流通株式の時価総額などの基準があり、ベンチャー企業へ投資する文化が少ない日本の場合は、株主があつまらないため、この基準を満たせない場合が多いです。また基準を満たしたとしても、時期尚早として却下されるケースも多いようです。参考https://www.jpx.co.jp/equities/listing/criteria/listing/01.html

では、上場していない大学発のベンチャー企業はどうでしょうか?
それが以下の表です。

2014年の65件
2018年の最新値が186件

と、非常に増加していることがわかります。
つまり、大学発のベンチャー企業自体は3倍増えているのです。
なので、IPOまで辿り着いていないとしても、イノベーションは起きはじめていると思います。
今後、数年でIPOまで出来る会社も増えてくると思います。

なので、一定の成果はある、と評価できると思います。

尚、主要国と比較も見ておきましょう。
以下は、年間VC(ベンチャーキャピタル)の投資金額と件数の比較です。
※VCとは、主に上場前のベンチャー起業などに出資する投資会社です。


ちょっとわかりづらいですが、棒グラフが「投資金額」、折れ線グラフが「投資件数」です。(欧州だけは投資社数)
青色の日本だけ著しく低いことがわかりますよね?
特に気になるのが「投資件数」は欧州や中国の30-40%程度なのに対し、「投資金額」は欧州の25%、中国の8%程度と、より一層悲惨な状態ということです。
アメリカに関しては「投資件数」は減少傾向なのに「投資金額」は急激に増えていますね。

わかりやすくするために、2018年の1件あたりの平均投資額を算出すると以下のようになります。(単位は億円)

アメリカ:16.2
中国:8.2
欧州:2.3
日本:1.6

如何に日本はベンチャー起業に資金が集まらないかわかりますね。

そして、これが新規上場が出来ない、という問題と直結しています。
新規上場できないということは、より資金が集まらない、ということです。

日本に1番必要なのは、VCじゃないかと思います。

では、次回は⑦中小企業の特許出願数割合についてみていきます。