オジギソウを知っていますか?

オジギソウを知っていますか?

葉に触れると、すっと閉じる植物です。
子どものころ、何度も触って遊んだ人もいるかもしれません。

このオジギソウについて、少し不思議な研究が出ています。

植物は、光が当たった「回数」を追っているのではないか。
そんな問いです。

もちろん、植物が人間のように「1、2、3」と数を数えている、という話ではありません。
植物には、人間のような脳も、動物のような神経系もありません。

それでも、刺激の回数や順番に応じて反応を変えているように見える。
ここが面白いところです。

光が来る日を、葉が待っていた?

ウィリアム・アンド・メアリー大学のニュースでは、Peter Vishton教授とPaige Bartoshさんによるオジギソウ研究が紹介されています。

論文はCognitive Scienceに掲載され、PubMedでも要旨が公開されています。

研究チームは、窓のない部屋の中に湿度などを管理したテントを置き、オジギソウに決まった光と暗闇のパターンを与えました。

最初の2日間は、12時間暗くして、12時間光を当てる。
3日目は、ずっと暗いままにする。

この3日周期を約5回くり返したところ、光が来るはずの日の「夜明け前」に、まだ暗いのに葉の動きが増えたそうです。
一方で、3日目のずっと暗い日には、その動きが少なくなりました。

オジギソウと、光と暗闇のパターンを示すカード
オジギソウの研究では、光と暗闇のくり返しに対して葉の動きがどう変わるかが観察されました。

ここから研究チームは、オジギソウが単に24時間のリズムだけで動いているのではなく、光が当たった出来事の回数や順番を追っている可能性を考えています。

ただし、ここは慎重に読む必要があります。

この研究は、「植物が算数をしている」と証明したものではありません。
PubMedの要旨でも、追加の比較実験をともなう再現研究が必要だとされています。

それでも、「脳がないから何も処理していない」と決めつけるのも早そうです。

ハエトリグサは、触られた回数で反応を変える

植物が刺激の回数を使う例として、ハエトリグサもあります。

ハエトリグサは、葉の内側にある感覚毛に虫が触れると閉じます。
でも、1回触れただけでは閉じません。

ヴュルツブルク大学の解説では、30秒以内に2回目の刺激が来ると罠が閉じる仕組みが紹介されています。
また、Current Biologyの論文では、刺激の回数に応じて捕獲や消化に関わる反応が進むことが示されています。

ハエトリグサが刺激の回数に応じて閉じる様子
ハエトリグサは、刺激が短い間に重なることで反応を変える植物の別例として考えられます。

これはオジギソウの研究を直接証明するものではありません。
植物も現象も違います。

ただ、「刺激が1回だけなら反応しない」「短い時間内に2回なら反応する」「時間が空いたらリセットされる」という構造は、かなりプログラミングに近いです。

これは、状態管理の話でもある

プログラミングで考えると、ハエトリグサの仕組みは状態管理に似ています。

感覚毛に触れる。
それをイベントとして受け取る。
回数を記録する。
一定時間が過ぎたらリセットする。
2回になったら葉を閉じる。

ScratchやJavaScriptで書くなら、変数、タイマー、条件分岐、しきい値の組み合わせです。

植物の反応を、光、記憶、葉の動きとして整理したタブレット図
入力、記録、反応という流れで見ると、植物の観察もプログラミングの状態管理につながります。

オジギソウの光の研究も、同じ見方ができます。
光が当たる。
暗くなる。
そのパターンがくり返される。
葉の動きが変わる。

生物の仕組みは、コードのように単純ではありません。
温度、湿度、植物の状態、測定の誤差など、いろいろなものが関わります。

でも、「入力があり、内部状態が変わり、次の反応が変わる」という見方をすると、植物はただじっとしている存在ではなくなります。

私はここが、子どもの学びにとってかなり面白いところだと思います。

自由研究は、結論より記録が大事になる

この研究から、家庭や教室で使える学びもあります。

たとえば、植物を観察するときに、「朝になると葉が開いた」「水をあげたら元気になった」で終わらせない。

何時に開いたのか。
光はどれくらい当たっていたのか。
温度はどうだったのか。
昨日と何が違ったのか。

こうした記録を表にしてみるだけで、観察はかなり変わります。

研究チームも、単に「葉が動いた」と言っているわけではありません。
24時間周期だけで説明できるのかを調べるために、20時間周期や、10時間から32時間のランダムな日長も試しています。

条件を変えて、原因の候補を分ける。

これは、プログラミングのデバッグにも似ています。
プログラムが思った通りに動かないとき、全部を一気に直すのではなく、変数、条件、タイミングを一つずつ確認します。

キノコードでは、こういう「条件を分けて見る力」を大事にしています。
正解を急ぐより、何を変えたら何が変わったのかを見る。
それは、理科にもプログラミングにも共通する学びです。

植物を見る目が少し変わる

植物には脳がないから、何もしていない。
植物には心があるから、人間と同じように考えている。

どちらかに寄せすぎると、この研究の面白さを見落としそうです。

大事なのは、植物を「入力と反応を持つシステム」として見てみることです。

光を受ける。
触られる。
時間がたつ。
内部の状態が変わる。
次の動きが変わる。

そう考えると、植木鉢の中の小さな植物も、少し違って見えてきます。

子どもと一緒に見るなら、問いはこれで十分です。

「この植物は、何に反応しているんだろう?」
「その反応をプログラムで書くなら、どんな条件になるだろう?」

植物は、算数のテストを解いているわけではありません。

でも、出来事の回数や順番に応じて反応が変わるなら、そこにはたしかにロジックがあります。
そのロジックを見つけようとする目は、理科にも、プログラミングにも、かなり役に立つはずです。